ラブレター/道草次郎
か援用できないなら、それはとてもつまらないことだな。
ぼくはいま、よく思い出すことをしたい。
小林秀雄が言っていたことをちょっと拝借して、卑近な自分の人生体験に当てはめてみる。そんなことが、まあぼくの落ち着いたところさ。文学が、というより本がぼくもらたしてくれるものはこういったことだ。
君は頭が良いからきっと笑うかな。でも、たぶんこれは想像だけど、君も年をとったから、あいまいであることや生活人にとって大事なことのいくらかはよく身に染みているはずだ。
ぼくは、感傷はいらない。
ぼくは思い出すことによって、はじめて僕自身のくらい階段に降りていけるというだけ。
この始末に困る恋文はどうぞ捨てて下さい。
けれどもどうか、階下を照らす松明にそれをくべてほしい。
ひととき燃え上がることで行先を照らす道しるべとはなりうるだろうから。
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