輪廻かな/こたきひろし
 

「父ちゃんが直接お前に電話するって聞かないんだ」
兄貴に代わったら全てがにわかに現実になってしまった
俺は身が震えだした

俺は直ぐに嫁さんに事実を携帯電話で伝えた
それから職場に父親危篤の事情を知らせて急遽早退した

兄貴から教えられた地元の病院に向かってハンドルを握っていた
運転しながら景色が涙に霞んで霞んで止まらなかった

俺にとって父親は反発と近親憎悪の対象でしかなかった
筈なのに
その時の俺は全てを赦していた

瀬死に横たわる父親が脳裏を駆けめぐって

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