ミルキーウェイ〜宮沢賢治と夜に捧げる/道草次郎
ぼくらがその時住んでいたアパートは二階建てで、二階のちょうど真ん中の部屋がぼくらの住処だった。
深夜一時半、月が白々と全てを明るく照らし出している夜の中へ、ぼくはひっそりと出ていくことにした。
先程の物音の出処を確かめに行くつもりだった。
あるいは、この何もかもが明るみにある満月の下の世界を探検するために。
パジャマの上から薄いパーカーを羽織って音を立てないよう慎重に玄関を開け外に出ると、しずかな風が吹いていた。
階段を降りてアパートの脇を通り、狭い路地をほんの十メートルほど抜けたすぐの所に、川が流れていた。
川べりづたいに繁茂している薮の辺りに、懐中電灯の明かりが二つ
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