なしごころ/ただのみきや
 
明な不可能性に密閉された可能性の
最終行
境のない空白を背にして






頬を掠めるマルハナバチ
勤勉な彼らは生涯に渡り
忘れ物も落とし物もしない
ただ 最後に一度
帰宅を忘れ
自分 あるいは
いのちを落とす





感染者

わたしはとてもせっかちだが
世の中はもっとせっかちだと思う
わたしもまた何かに感染しながら
良からぬものをまき散らす
悲しいとか寂しいという言葉で
伝えられる気持ちなら
ただツイートすればいい
時代の一体感を得たいなら
海月のように流れればいい
悩みとは執着
取り囲む不条理に対抗し

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