思い出の中で記憶が揺れるのか 記憶の中で思い出が揺れるのか/こたきひろし
産まれたばかりは
眠っているか泣いてばかりいた
産まれてばかりも
夢を見るのか
見ないのか
記憶は何もない
まるで
無感覚か無意識の
暗闇だったから
誰かに
何者かに
私が最初に
この世界に抱き上げられた
その時
自分は単純に生きた肉片の集まりに
過ぎなかった
かも
解らない
そして
母親なる人の
胸に抱えられた肉の塊は
瞬く間に自立歩行した
成長は
言い換えれば
細胞の劣化
やがて生を死へと導く為の
戻る 編 削 Point(1)