言ってやろうか。聞かせてやろうか。/こたきひろし
 
言ってやろうか 聞かせてやろうか
俺を産んだ女は無学で
字もろくに書けねえ読めもしねえ女だった

昭和二十年
この国は戦争でぼろ負けになり
東京辺りは焦土と化してしまったけれど
嫁ぎ先は山んなかの僻地だったから
運よく戦火は免れた

なのによ
運悪く終戦前に亭主は戦地に召集されちまった
そんときには長女が腹に入っていた
幾ら時代だからといっても心細かったろうし
想像できない辛酸を舐めたんだろうな

でも女は強いよ
そんな戦時を身重の体で生き抜いて
無事に俺の姉ちゃん産んだんだからよ

俺の親父も凄かった
五体満足で帰って来たんだからよ
可哀想に親父の弟は
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