早贄/ただのみきや
 

なだらかな午後
ただそれ自体の円みと感性で
転がって
吸血する問いとなり
落下する 分裂の暗い谷へ

隠匿されていた
真っ赤な夜が溢れても
目交いすらなく
過る夜鷹に
斑に蝕された月の

繰り返される口形
結ぼれ解ける緋の花弁
白く煙を紡ぎつつ
滝の向こうへ
消える手毬のように

追いかけて
切断され
むやみに並べられたもの
継目のずれたまま自転を続け
自重と脆さで崩れて往く
始まる前から手遅れだった
わたしの死も
あなたの死も
過ぎた夏の夢
よく似た野の花々が
そこかしこに匂っていても

―――白昼に穿たれたもの
  
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