かいてください/木葉 揺
すみません。
ちょっとかいてもらえますか?
あ、背中じゃないんですよ。
リュックの中にノートとペンありますんで。
え?いやぁ、私はご覧のとおり、
右手に長男、左手に長女のいるベビーカーで手がふさがっています。
家で?
間に合うわけないじゃないですか。
いいから、そこのオープンカフェのテーブル借りて、
ノート広げて。
そう。
さあ、早く。
口では言いませんよ。
言葉に直せないから頼んでいるんです。
だ、だいだいだいだい、大丈夫って。
ペンを紙に当てて、浮かぶことを書いたらそれです。
私の書きたい言葉は。
あ〜、よしよし。
長女が泣き出しちゃいますよ、本
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