満月の夜/道草次郎
 
ぐ涙ぐんでそのくせ怒っては口汚く罵ったり
つまりは
いつもと変わらないのかもね

だとしても
ねえ
たまたまだということしておこうよ
今夜は

僕らがこうして電話で話するのは

たまたま僕らが知り合いで
たまたま一緒に暮らした事があって
たまたま二人には子供がいて
たまたまいざこざの果てに同じ時間を共有してる

だからなんだって


星たちは笑うんだろうな
そんな
今更でめちゃくちゃな話

でもね
人が人と折り合うとか折り合わないとかそういうこんがらがった時
最後にはやっぱりどちらかが椅子にちゃんと腰掛けるものだと思うんだ

それまでよりも少しだけしっかりやろう
今夜は違うんだ
そう思うことからしか明日は始まらない気がするんだ

そんな
率直すぎる結論を望んだのって
僕でも
君でもなかった

僕らに流れた歳月が
自然と
そうさせたんだよ

この
満月の夜に






戻る   Point(5)