蛇は何処へ/こたきひろし
 
夏休みの宿題なんてどうでもよかった
日中 曇天か雨天でない限り
太陽はかっと照りつけて気温は空気が焼けるまでに上昇した

粗末としか言い様のない昼食をすませると
近くを流れる川で水を浴びるのが日課になっていた

昭和の三十年代だった
その頃の子供らは一様に水着なんて持ってなかった
山あいの辺鄙な場所
まだまだ戦争の傷痕は癒えていなかった

東京から親類筋を頼って疎開していた家族が存在していた
彼らは東京に戻れないまま親類筋の家に住み着いたままになっていた

八月
けして
敗戦とは呼ばれない終戦の月

真夏
快晴の正午を過ぎると
近隣の子供らは誰もが気が昂っ
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