あの日あの夜あの時の感傷/こたきひろし
 
真実の仕合わせと
偽物の仕合わせを
きちんと見分ける眼なんて
持ってなかった

ひとときの感情に振り回されて
見失った大切なもの

振り返れば
ずっとずっとずっと
続いている自分の足跡には
悔やむ思いが刻まれていた

愛する人と
愛してくれた人
この眼を閉じれば瞼の裏に思い描ける人

その数はほんの僅かでも
いつかは届かぬ所へ離れていく運命

少年の日
この胸を焦がした夢は
流された歳月に儚くきえた

今は目の前に有るものが全て
老いて干からびた手は
握り締めてもこぼれて落ちるものばかり

こぼれて落ちるものばかりだ

何も拾えない
何一つ探しあてられない

寂しさばかりを
汲み上げてしまうだけ




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