いつかこの街を/こたきひろし
 
いつか街を出ていく
それはいつかわからない


いつか街を出ていく
この街を出ていく

遠いむかし
産まれ
育った
故郷を離れた日みたいに

いつか部屋を出ていく
この部屋を出ていく

この部屋を出ていったら
そこで一緒に暮らした人
そこで愛しあっていたのかも知れない人には
自分の抜け殻だけを遺していく

抜け殻は
やがて荼毘にふされ

一緒に暮らした人
愛し合ったかもしれない人の
記憶の頁の一葉のしおりになって挟まれるだろう

だけどしおりは風に飛ばされて
消えていく運命

いつかこの街を出ていく
いつかこの部屋を出ていく

いつかこの世界を出ていく

その日の為に
今日と言う日はあるんだ

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