とある二編/ただのみきや
とある一
――――――それは
俯く若葉のこらえきれない涙
朝には珠となり蜘蛛の糸を光で撓め
――――――それを
誰が量ったか
人も地も飲み切れず地も人も飲み込むほどに
問うこともなくそれが弾き始めると
ピアノは崩壊した
黒鍵は地に暗く浸透し
白鍵は飛沫となりそれを覆う
不協和音ですらない轟きで
わたしは泥土に暴れ狂う竜になりたい
でなければ静かに開く白蓮に
だがこの身は土器のかけら
炉を通らずに再び泥と入り混じる
形も朧な器だった
人は魚であることを疾(と)うに辞めていたが
いつまでも翼は生えてこなかった
どうか人の辞め方を教え
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