盲目/アラガイs
 

渓流を下ると川幅は急流に狭くなる
浅瀬から水を撥ねた石には硬骨の節がある
隠れ鰻のように蛇行を繰り返し
河原に辿り着いたのは強固な意思に違いない
嘆く陰翳の底暗さの中に一点の灯りを見出したのだ
それは絶望の澱を手繰り寄せる糸に違いない
非と凡人ならばそう考えもするだろうか

    置き去りにされた疎石にも意思はあるんだよ

男は呟きながら河原の足下を探して歩く
小鳥のような獣に近い喉の響きが渓流から谷を越える
 瞑想と幾年月を暗闇の廊に繋がれた金糸雀(カナリア)
 喧噪から鉄釘と打ちつけた壁に塞ぐ眼と耳を
              陽は天上の隙間から差し込める 
[次のページ]
戻る   Point(7)