鯉/
春日線香
水面に顔を寄せていくと
無数の鯉が浮かび上がってくる
餌をくれると勘違いしているのか
ぱくぱくと開け閉めする口が異様である
指でも突っ込んでやろうか
でも吸い付かれたら気持ち悪いな
上空の雲は思いのほか素早く動き
街を行く人も足早に行き来する
長いこと水辺に腹ばいになって
目を血走らせているのは自分だけだ
それでも鯉は寄ってきてくれる
どれも期待に胸膨らませて
うまいものをくれると思いこんで
なんて健気なんだろうと思う
すばらしいな
脳が小さいな
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