新たな起点/ただのみきや
 
の光彩を帯びる
秋に手招く稲穂のように

むかし遊んだ空き地には家が並び
砂利道も整備されて広く溝もない
微かに憶えていた建物も消えている
だけどもともと
はっきりと自分で触れ
心を揺らしたもの以外
すべては曖昧な壁紙のようではなかった
幼い頃なら尚のこと

いま生まれ育った場所から離れ
よくわからない建物に囲まれているが
目の前の空き地には
見慣れたイネ科の雑草が生い茂り
(あの穂の部分をするっと引き抜いて
沢山集めて戦争とか言ってぶつけ合ったり
紋次郎みたいに咥えて気取ってみたり――)
まるで扇がれた手妻の胡蝶
あまりにゆるやかなエゾシロチョウの羽ばたき
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