目が覚めたら/こたきひろし
 
なくなった携帯を
手に取って時間を見てしまうのは
毎朝の事だ

ベッドの上には妻なる女が
鼾ではなくて寝息をたてていた

きっと浅い眠りなんだろう

幸福感は
それを鋭く意識していないと
たえず見逃してしまうような気がしていた
そんな気がしがしていた

勿論
そんな思いに無意識になれてしまえる自分もいた
それが占める時間がほとんどだったし
何も考えない事に解放されている自分がいた


なのに
目が覚める度に
毎朝妻に背中を向けてい横たわっている自分がいた

二人分のベッドの上は
不毛の荒れ野の匂いがして
それを拭いきれない

それを敏感に感じてしまう自分もいたんだ

目が覚めたら
朝からどんよりと疲れている私と
その身体があった
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