目が覚めたら/こたきひろし
目が覚めたら
朝からどんよりと疲れている私とその身体があった
昨夜は熱帯夜だった
ダブルベッドの上で
乱れた寝具は汗と脂のイヤな匂いがした
人それぞれに体臭がある
人それぞれに口臭もある
朝はそれが如実にあらわれるものだ
男と女がひとつの屋根の下に暮らして
人のつがいとなって棲息するという事は
お互いの体臭と口臭を否応なしに共有するという事
なんだとずっと感じていたんだ
感じない訳にはいかなかった
その匂いを許容し合えることが
愛情なんだって確かめあえるほどには
成熟しあってはいないけれど
目が覚めたら
もはやいっときだって肌身から離せなく
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