赤く塗れ/ホロウ・シカエルボク
 
移住してみたところで、そこには人間が居て、社会を形作ってるに違いないんだから―出来事はありふれた、ちょっとしたことでいい…大切なのはそのことを、目の前をただ過ぎて行く流れとして片付けないことだ―結論はひとつだけなんてありえないことさ、すべての出来事は多重的なんだ、ただ、どうしたってそれをひとつにしたいやつらがうようよしてるってだけなんだ、いいかい、奇をてらう必要なんてない、爆弾で死んだりしなければ詩人として報われないなんてことはない、ひとつの出来事に数行のフレーズを当てはめることが出来れば、そいつは詩人としちゃ上出来の部類だ…放っときゃあいいんだよ、ただ同じところをぐるぐる回っているだけのやつらなんてさ―彼らは一見凄いスピードで歩き続けているように見える、激しく腕を振っているからね…だけど見てごらんよ、わざとかどうか知らないけど、自分の立っている場所からは一歩も動こうとしていないんだ…俺は蝿をはらいながら次の行を探す、求めよ、さらば―。


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