ずっと不安で震えていた/道草次郎
 
ずっと不安で震えていた

曖昧な言葉しかない世界で

曖昧な事ばかりをした

絶望など存在せず

かといって希望も無いような世界が

意味もなく立ち込めていた

間違うことから逃げ続けて

間違える力を失った

哀しみを忘れるあまり

喜びを思い出せなくなった

心はいつからか

灰色の吐き気に喩えるしかなく

体は機能を失い続けた

日々の中で

自然だけが風に吹かれていた

木々たちだけが

木漏れ日に親しかった

人が人であることはよろこびであると神が
定めたからか

わたしも親として子によろこびを届けたいと願った

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