独白は灯りの真下を避けて/ホロウ・シカエルボク
嘔吐、のようになまぬるい夜を落ちていくそれに、名前をつける気などあるものか、おれはとうの昔におれ自身ではなくなってしまった、いや、忘れてしまっただけかもしれない、けれど、それはいま語るのに必要な言葉じゃない、おれにステップを踏ませてくれるような言葉では有り得ない、いまこの場所にないのなら、それはないということだ、いつかの話になんてなんの意味もない、その時間軸がどこに位置していようともだ、いまでないのならそれは空想のようなものだ、たとえ過去だったとしてもだ、過去は記憶にまつわる妄想だ、そう思わないか、それは感情によって塗り潰されてしまう、経験として通り過ぎたそばから上書きされて印象のみの記録にな
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