恋昇り13「意味のない会話、意図のない話し」/トビラ
配慮する。だから、心配しないで」
「大船に乗ったつもりでいていいですか?」
「うん、とびっきりの豪華客船に乗ったつもりでいいよ。ああ、それだと、タイニッタで沈没か。だったら、ノアの方舟でも、なんでもいい。だから、もう心配しないで」
「……、はい」
蜂塚さんとの連絡を終える。
窓の外を見る。
曇の隙間から、何条も光が降りている。
その光の柱は、街を焼きつくす清浄な光線にも見えるし、雑踏の人に当たるスポットライトのようにも見える。
窓を少し開くと、あたたかく濡れた空気が入ってくる。
空調の効いた部屋。
中の乾いた冷気と、外の湿った熱気がまじったところに立って、私は呼吸する。
とりあえず、私はまだ生きている。
だから、まだ、私にもできることはあるはずだ。
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