ソファで夢みるように三月のわたしは鍵をあけた/かんな
ルの塔の崩壊のごとく、わたしもろとも崩れていったのか
空っぽのわたしが海の底で眠っている。
木の陰で息をひそめている。かがんでいる。足を痛がっている。泣いている。
疲れている。マグカップでコーヒーを飲んでいる。
薄手の毛布にくるまっている。きれいな日本語を話している。
三面鏡に向かって暴言を吐いている。煙草を男に渡している。
夢を見ている。空を飛んでいる。いつものように飛んで、そして落ちていく。
バケツに生首を入れて運んでいる。
逃げる逃げる逃げても逃げても逃げきれずに、
ーようやく、朝がきていた。
わたしと十七歳のわたしとが祈りのような言葉を交わす
いったいどこに流れていく。もう幸せを歌って暮らしていけばいいだろう
わたしの人生も、誰かの人生と、手と手を、手と手を重ねるほどに
真っ暗な夜道を歩いていても
かき集めてすくい上げて抱きしめて、叫べばいいだろう
きっと愛すれば、その愛ゆえに苦しみ、その愛ゆえに苦しめてしまうのか
玄関前のプランターに水をあげるように、ただシンプルにただやわらかに
ただ思いやりをそっと、傍らに置いていく日々を
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