一晩中娘道成寺を見ていた/ただのみきや
た本の中はまた海だ
危ないの「あ」 まで叫ぶと
またも人魚の顔面をパイナップルが襲う
早めにコーヒーを淹れればよかったのだ
誰もいないはずの後ろに誰かが立つ 刹那
わたしの頭は本の中へ切り落とされた
*名も知らぬ遠き島より流れ寄る椰子の実一つ……
見回せばパイナップルもあちらこちらに浮かんでいる
原子力箱舟が救われたがりの人類を乗せて彼岸を目指す
モゥビ・ディクが全てをぶち壊す
幾人かが必死に溺れまいとそれぞれの幸福論にしがみ付いたが
まもなく鮫の餌食になった
少年よトビウオを目指せ 空でカモメと交尾せよ
そうして人類を思考する飛行
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)