骨の町/岡部淳太郎
 
が身を振り返り
この骨の町を振り返る
夜行性の猫がはげしく泣き
早起きの鴉は悪知恵を逞しくさせる
骨も 肉のようにふとることがある

そうだった そうだ

気をつけないと おまえもふとるぞ
春からのいらぬ忠告
俺の春からの いらぬ忠告
相変らずの体臭の町
骨の むせる臭い
俺の体臭はいまもここにとどまり
明日も
新しい天使の八重歯に騙されるだろう

いまの 骨からの肉づけをする

そのためにふとる
あるいはやせる
ここにいることの不満で
いまだに立ち騒ぐ
俺の中の
春の霊



(二〇〇三年三月)
戻る   Point(4)