骨の町/岡部淳太郎
春の鼻先で鶯どもが歌う
淋しい発声練習
その声に誘われて わが幼年の町へ向かう
死を虐殺する季節
音も 物も
すべてに色がつき始めるが
この骨のような町はいつまでも
錆付いた単色のまま
のはずだった だが
しつけの悪い子らが駈け
若さでふとった女たちが通り過ぎてゆく
春
一年毎に訪れる
相も変らぬその体臭
俺は弛みながら 屍姦しながら
自らの幼年の時をごまかす
うやむやに
無理矢理に
形づくる 形をこわす
いまの 遠因の町
わが骨は弱って 祟られて
膝はぼろぼろに折れてゆく
はらはらと
落ちる涙
散る花びら
感傷的な角度の中でわが身
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)