無限多面体/ハァモニィベル
 
喉から言葉を産む衝動
呪われた排泄行為
絶望は飢餓をなし
無意味を孕ませ
腹を裂く

沈黙が澄み渡り
凍らせた純真に
コンクリートが樹神(こだま)する

レインコートを着た存在の影が
雨の裂け目の中に姿を隠す
足跡の黒い温もりを蹴って

濡れながら彷徨う影が
遠い呼吸の彼方に漂う
いつも季節のなかに潜り込み
録音された夢を聴く
欲深き産声のような

歌う骨壺を抱えて歩く
爪先のある魂が悶える
風に飛ばされてゆく真っ白な帽子は
真っ青な画布のなかを奔り去る
砂上を媚びるように運んでいく疼きは果てしない

朝が照らしだす時間のなかを
虫が時計のように這う
景色を脱ぎ捨てるたびに舞い落ちる箱庭

溢れ出し、堆積する
言葉の塔だけが、もう遥か彼方に
瞼の向こう側に広がって聳えていた
それが消え落ちる
いま溶け落ちるように頬を伝いながら














***
〔――メビウスリングの終了の際、記念に書いた詩〕
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