雨はきらいじゃない(落ちの無い話)/山人
 
がふるふると揺れ、若い葉も雨を得てうっとりと瞑想している。休んでいると心拍数は次第に落ち着き、七〇前後になった。雨なのに遠望が利く。山頂もはっきりと見えていた。
 途中二ヵ所ほど補助ロープとザイルを垂らし、雪渓のある分岐で道標を立て埋め戻した。雪はかなり融け、下の固い雪が露出し、滑ると滑落の危険がある。こんな雨の中、三名ほど山頂に向かう足跡があった。私は一気に萎えた。なぜなら、この雨の中、山頂に至るものなど皆無な筈で、山頂と二人きりになる事を求めていたのだった。そこに先行者だった。
雨のふくよかな空間と、むかえてくれるだろう頂きの冷気が私は欲しかった。 山頂に向かいつつ、徐々に行く意味も薄れ、
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