在る此から(これから)/アラガイs
二つ卵に割れて流れるに身を任せる
十日前の新月だった
流れは巌に砕けあたりの身をちりばめる
風の囁きをきいた
蓮の葉につかまるのは何者なのか
三瀬川を下れば向こう岸がみえてくる
先に流れされた者が兄だと知らされたのは七日後だった
水嵩も減り大きな眼が火花を吹きかける
澱む流るるに粘る手もようふようとはがされる
あれから卵を抱えた浮き袋も月にふくらみ
つたう蔦のほつれる のぼりだ
小糠雨かとさまよう蛍の朧気に瞑る待ちく
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