そよぐものが
その動きが頬に触れた
ように思える正午
かすかなこそばゆさとともに
笑いながら人は
なにをあきらめ
なににつとめて
向かってゆくのか
これからのことなど
これまでのことなど
どうでもいいんだ
そよぐものの前では
人はただまどろみながら
自らもまた
まぼろしのように
そよぐものが
そよぐことを
やめた時
すべては動きをやめ
時までも止まる
まぼろしに似た現(うつつ)
そこから人は踵を返して
なにを探しに旅立つのか
われ関せず
なにも知らぬのかのように
ただそよぎつづける草
ただいのちであるだけの広さ
きっと
幾度争いが起こり
その度になにかが失われても
変ることなく
永劫のように