小詩集・そよぐもの/岡部淳太郎
 

そよぐもの 1

風にそよぐものが
目に触れると
忘れていたことを
思い出しそうになる

幼い者も
風に吹かれて
そちらの方へ
届かない手を伸ばして



そよぐもの 2

そよぐもののにおいを
胸のなかに吸いこむ
季節が変ったあとの
暖かいよそよそしさが広がる



そよぐもの 3

なにを思い出すのか
なにを予感するのか
そよぐものはただ
無言で風に打たれているだけで

それを見る人だけが
なにかを感じていて



そよぐもの 4

{引用=まだ心ではない
心というにはあまりにも
美しい
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