六月酔歌/ただのみきや
 
た幻の
油絵の中で暮らす向日葵の少女や
麻の葉に座した女神が
すぐそこに再び訪れたかのよう
木々を摩って抱きしめる
風の姿態に目を奪われている



 *
ハリエンジュの蕾の白い房が
午後の日差しにまどろんでいる
風のゆりかごで
揺られるままに揺れ
夢見るままに笑み
白い蝶が戯れにのぞき込む
あの甘く溢れる香りの海は
まだ内側に閉ざされたまま
欄干から雀が見上げている
小さなあたまを思案気に傾けて
訪ねるべきか止すべきか
木洩れ日の誘う
あの針の廊下の奥の奥へ



                《2020年6月7日》









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