六月酔歌/ただのみきや
昨日まで聞えなかった蝉が鳴き出した
*
悪を行うつもりで行う悪はたかが知れている
だが善を行うつもりで行う悪に際限はない
それは敵対勢力と自己犠牲の陶酔感でより強固になる
そもそも正義とか平和とか愛とかは曖昧な概念で
一時それらしく見えても持続しないことが大半だ
同姓同名の別人を各々が追いかけているようなもの
正義の暴力 平和のための戦争 愛故の嫉妬や殺意
憧れは憧れのままが花
人が増えれば楽園にだって公害や犯罪は起こる
「人皆これ悪党」 そう思って暮らすことだ
正義に御執心な悪党
愛に飢えた悪党
平和を語るのが好きな悪党
政治に熱心な悪党
と
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