鬼灯の袋が紅く色づく頃/こたきひろし
生家の庭の隅で鬼灯の袋が紅く色づいた
その袋を裂くと中の丸い実も紅く熟れていた
季節になると三人の姉妹は競うように
きように丸い実から中身を抜き取ると空になったそれを口に含んで鳴らした
記憶がうっすらと私にはある
いちばん上の姉と末っ子の弟の私との間は十個離れていた
彼女は千九百四十五年の生まれだった
姉の下には兄がいた
私には兄との思い出がほとんどなくその関係は希薄だった
私の記憶の大半は三人姉妹がつくってくれた
三人共に弟を可愛がってくれた
とくにいちばん上の姉は母親の役目を存分に果たしてくれた
父母は畑や田んぼの仕事
冬の農閑期には山仕事で目一杯
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