愚かさの取り分/ホロウ・シカエルボク
 
がら舌打ちをする、お前俺より臭いけれどな
俺が鼻で笑うとそいつは椅子を蹴飛ばしながら立ち上がって向かってこようとする
修行僧のようにグラスを拭き続けていたバーテンが顔を上げてこちらを見る
どちらに原因があるのか出来るだけ早く突き止めようとしているかのような冷たい目で
「よう」男は俺の側で見た目ほどにはでかくない声で凄む「なめてんのかい」
俺は黙って首を横に振る、それからグラスに残った酒を飲みほす、氷が小さな音を立てる
男はそのグラスを手で払い落す、グラスは床で幾つかの欠片に分かれる、俺は立ち上がる
「やんのかよ」と男は年甲斐もない口調で言う、俺は黙って立ったままそいつを見ている

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