帰郷/ただのみきや
祖父の無線アンテナが世界中から不幸を手繰り寄せていた
朝はもう昔だ。ツユクサやイヌノフグリに覆われたあの土の
盛り上がった一角、あそこが祖父を埋めた場所だと、誰から
教えられた訳でもなくずっとそう想っていた。
曇りの日は朝から鏡ばかり見ていた。鏡の中の自分の匂い
を嗅いでいるうちにいつもキスしてしまう。ある日いつもの
ように夢中になっているところを近所の年長の男の子に見ら
れてしまいよくわからない怒りが激しくこみ上げてきた。体
が火照って高熱が出てそのまま二日間も寝込んだしまったけ
れどその間に随分背が伸びたのだ。
大雨が降ると魚たちが雨を伝って屋根にまで上がって
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