遣らずの雨/あらい
空蝉が泣くような強い雨に導かれて
照り返される、夏の名残に、
逃げ出した若者たちを追いかける
蒸し返すような青い海が私の故郷とあるだろう。
もう誰の肩書きも忘れた 太古の地に芽を生やし
行く度も姿を変えてきた魂とフィラメントの憎々しい明り
生まれつきの依代はなんだってよく蛾は光に打たれ死ぬ
幾度も腐食を早める、千切れ途切れの紙幣は脱ぎ捨てられ
膝を抱えてはフラフラと身を宿してゆく蛹の夢。
実は窶ヤツれるばかりで、そのうち眠りにつかせること
聖なる夜も アホらしきかな、いくど も はて とも
汽車の中に自動販売機が列をなしている
寄生を繰り返し、棚に埋もれる土産の
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