道楽者/ただのみきや
 
本能は満たされる
理性は
果てしない貪りへの扉である



錬金術師のように
どんなものからでも美を抽出する輩がいる
彼が対象に魔法をかけているのか
見ている者に魔法をかけているのかはわからない
おそらく己に魔法をかけて
まわりを巻き込んでいるのだろう



裸の美に憑依された者は生贄の女王
贄でありながら捧げられる神々に崇拝される
姿なきものの顕現として輝き
燃え尽きる花びら 灰にはなにも残らない
ただ詩や絵画の中に影を残す
やがてそんな模倣が美の本体と成り代わる

そうして超がつく高級料理
美味いという前提で解説される
庶民には手の届かないものと
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