五月の歌/梅昆布茶
 
ちいさくてとってもちいさな貝殻があった

優しくてとってもやさしい友達がいた時もあった

幼いころ姉がひらがなの練習をしていた
たぶん卓袱台で宿題でもしていたのでしょうか

対面でそれをみていたらしい僕は
しばらくは
ひらがなを逆さまに書いていたそうです

いまは同じ社内のひとの名前さえ出てこないときがあって
それは脳の鮮度のせいにするしかないのです

個人の記憶は個人のものである反面
ちょっぴり
社会の財産でもあるのかもしれません

紅い花よりも波長の長い色は不可視なんだね

紫が尊い色だとしてもそれより波長の短い色も視えないし

鳥は人間よりも紫外線領域の世界を感知して

四月になれば彼女は
優しい髪をなびかせ
ちっちゃな牙をかくして
居留地からにげだすんだ

約束なんてなかったとおもいながら
約束がほしかったのかもしれない

五月なんていらないと思いながらも
カレンダーをかってにかきかえて


















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