メモ/はるな
 
、と言うひともいるし、花くらい買って行きたいんだけどね、と言うひともいる。
様々な意見が飛び交うなかを、受け止めたり、かわしたり、あるいは自ら矢を放ちながら、誰もがこの事象のただ中にいる。
ただ中にいる、と思うだけで身が竦むような臆病さを、いくつもの花瓶を洗いながら擦っていく。茶色けた茎の裾を切り落とし、あるいは割りを入れ、あたらしい水に活けていく、花は喋らないので(そして咲いて、枯れてゆくので)、わたしは救われる。
花くらい、と思う。花くらい、詩くらい、朝ごはんくらい。あったってなくたっていいのよ、と思うものが失われ続けると、生活もなくなってしまう。
あしたは休みで、家には娘と夫がいる、海のほうでは雨がふるようだ。わたしたちは、せまいせまいベランダに椅子を出してあまいパンを食べるだろう。
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