チーズの箱/ブッポウソウ
たって迷うということがない。人生を考える年齢になってなお報われるあてのないー少なくともこの者にはそう見えるー芸術活動に没頭できる種類の人間である同居人にとって、お八つに食べるプロセストチーズの種類など取るに足らないことなのだろう。しかしこの者は迷う。行き先へはこの道で正しいのか、それ以前に行き先はこれで正しいのか、いやそれ以前に正しい行き先などというものが自分に設定できるのか、いやそれ以前に…という具合に。そしてそうやって迷うことで自分の未来の利益を最大化できるし事実そうしてきたという自負もあった。赤黄色の紙箱もそうやって迷った末にたどり着いた選択のひとつだった。
ーてかどっちでもよくない?
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