とどけるために/岡部淳太郎
とどけるために、思いをこめた言葉は、宙を舞い、無の
なかを漂って、さまよっている。無のなかで、それらの
言葉だけが、有の属性を示している。すべては無なのだ
から、そのなかに有があったところで、意味などない。
そんなおおいかぶさる無のなかで、言葉は場違いで、居
心地が悪そうにしている。それでも、言葉は闇のなかを
さまよって、たどりつくべき場所を目指している。とど
けるために、ただひたすらそれだけのために、思いはこ
められ、無数の歌になり、何枚もの千切られることのな
い手紙になり、語り終えることのない物語になった。そ
れらの言葉を笑う者は、いのちの側に属していない。だ
から、どれ
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