風のテラス/草野大悟2
び)えている。残念なことに、俺のお気に入りの窓際の席からは、脚の部分三分の一程度が見えるだけだ。
鉄塔の周りを囲む高さ四メートル程のチャコールグレイの金属柵には、
あぶない
この中に
はいらないでください
と書かれた黄色い看板六枚が結び付けられていて、鉄塔の周りだけ、風が佇んでいるように感じられる。
風のテラス──
原稿用紙を持ち込み、この店で書き物をする時、俺は、一瞬だけ、心の奥の奥のずっと奥底を吹く風に出会えたような気がして、ふーっ、と大きな息を吐く。
戻る 編 削 Point(1)