気が付いたらボロ雑巾のようにベッドに転がされていた/山人
情が硬く、彼女に対して突っ込みすらできなかったという事だった。再び、荷を整え、元の普段着でナースセンターの横を通るとき、もう一度A看護師に礼を言いたかったが既にシフト時間は過ぎていた。
看護師や医師の力量にも差があったり、経験値のある者ない者、それぞれいるが、彼ら彼女らが経験を積むためには私たちのような患者が存在しているというのは間違いではないだろう。実践をし、技術も上がり、A看護師のような魅力的な看護師にだってなれるのだ。A看護師にもう一度会うためにはまた病気にならなければならないが、それは避けたい。思い出の中で美しい妄想をしていればいいのだ。
妻とともに病院の外の駐車場を歩くとき、風は硬く胸に入り込んではいたが、遠くの山は緑に覆われ始めていた。
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