君を視る/服部 剛
 

目に見えない敵に
この世から連れ去られぬよう
逝ってしまった人の命を
決して、無駄にしないよう

今こそ、心と心を結ぶ縁(えにし)の糸を想いながら
部屋の中に佇み
私の今を、見つめよう
日々の素朴な暮らしを、営もう

  ステイ ホーム

の発令に、世界が覆われた季節の中で
地球という壊れかけの住家の回復を
あきらめず、夢見て

君よ、また会おう
再会の日に互いの肩を抱く瞬間を
私は待つ 

――幾重もの闇を光の矢は貫いてゆく 

今夜も、いつしか妻と息子の寝顔が並ぶ
東京都内の、ある街の静かな家で
秒針が刻む時の音(ね)を、私はひとり聴いている  





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