君を視る/服部 剛
令和二年の春
コロナウイルスは世に蔓延(はびこ)り
入院中の恩師に会えず
実家の両親に会えず
隣町の友にも会えず
一つ屋根の下、妻と幼い息子と共に
ひと日を過ごし、夕暮れる
ついこの前まで
実家で食べたおふくろの味や
仲間と囲んだ食卓は
もはや夢のような幸いだったと
今更ながらに、私は知る
互いの顔を合わせ、握手さえできない、今
体と体の距離は離れているが
なぜだろう
心と心の距離は近づき
今宵、私は不思議なほど
会いたい誰かの瞳が、視える
君よ、遠い瞳で
私を見つけてくれて、ありがとう
もうこれ以上、かけがえのない人々が
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