ゆうべの喫茶店/ふじりゅう
 

抜き取り消える男
雨は彼に寄り添い また迷う
煙に巻かれる私へ尋ねごとを繰り返し
五感がむしり取られる
たぶん、何一つ判らない生涯が善人を縁取る
カップに鈍く光る光は、だれの光でもなく
眩しすぎて
私は既に太ももまでをも失った

小雨はひとしきり吸い込まれたようだ
常に不敵なマスターの舌には
砂糖もミルクも存在しない
最期の一滴までコーヒーを啜りこむ
それが「腐ったこーひー店」のしきたりらしい
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