求めるものは/岡部淳太郎
 
人々の息の合間に夢のようにあるだけだった

私があれほどまでに求めたものは
美しい姿のままでやがて消えていった
その背中はぼんやりとまた当然のように
見知らぬ人々の行き交う中に消えていった

私が求めていたものはあの時ほんの瞬間
姿が見えただけで満足すべきであったか
光が明滅する薄暗い空間で
はかなくも輝いていたものよ

それともそれはまた別の時にいつものなじみの場所で
動かしようもなく私の前に現われるか
また今日のような遠い見知らぬ場所で
疲労とともに捜索しなければならないか

結局私が求めていたものも
私を容れることのない見知らぬ世界の法則の中にあったのか
それを知ろうとしない私には永遠に
求めきることの出来ないものであったのか

私は疲れていつもの塒(ねぐら)へと帰る
その夢の中で求めるものは
私の変らぬ渇望として誘うように
また導くようにあるだけだろう



(二〇一五年四月)
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