午睡/墨晶
以上の話をデンキ屋の息子のフミハル君にはなすと、
「 ああ ウチにはオクザシキもフトンベヤもないし 猫もいないからソボは来ないんだな なるほどね 」と云った。
のちに、「ソボ=祖母」であること、「老人の女性=オバアチャン」であることを確認し、わたしもマサキ君も間違ってはいないかったことに安堵した。
そう云う訳で、ソボは座布団に乗って空を飛行し、町内の特定の家々にお邪魔していると知ったのだ。
手ひとつでわたしを育て、「 ソボに近づくな ソボに関する話はするな 」とわたしに厳命していた母がチューブやケーブルだらけになってベッドの上で数年が過ぎた頃、座布団に座っていたあのひとの事を自らはなし始めたとき、正直わたしは狼狽した。母の養老院から帰る路、寄ったウナギ屋で重をつついているさなか、「 あれはソボなどではなくオマエのチチオヤだった 」と云う母の話が頭に入らずにいたわたしは、ふと、「 ああ そうだったのか 」とやっと理解したほどだった。
了
戻る 編 削 Point(2)