空回り/トビラ
笑む。
よ、よかったー。
「本当に怒ってない? ウソじゃなくて、本当?」
ウソと、本当で、えーと、あれ?
「怒ってるっていうのがウソ。怒ってないっていうのが本当」
あ、よかったー。
花村さんは、どこか満足そう。
「結城君、これからさ、二人でいいこと、しよっか?」
「え? いいこと?」
「うん、いいこと」
「それは、ウソ? ホント?」
「どうなのかな? これから試してみたら?」
そう言って、花村さんは意味ありそうに笑う。
僕は、もうずっと前から戻れなくなってて。
そのことを強く思い出す。
後日談でいうと、いいことは本当にいいことで、すてきなことでした。
戻る 編 削 Point(1)